2-5.HECTHOR

 ロケットのような攻撃的なフォルム、斬新な素材、C&Mを意識した、高速性重視の設計思想。
 あらゆる面で現状のFomula highpowerdレースの常識から外れた、癖のある新規参入チームだ。文字通り「超速の翼」を形作るHECTHORの戦略とは?
エンジン:Arcturs 240

 新規参入チームであるhecthorは、当然資金面ではお世辞にも裕福とは言えない。ましてや、老 舗チームのように、チーム・エンジンメーカー間での深い絆も存在しない。
 そんな中で同チームが選んだエンジンは、Arcturs社製240エンジンである。Arcturs社製エンジンは、過去の実績から高速性重視のエンジンとされてる(実際Arcturs社自体は高速性を第一研究としている わけではないが、結果的に高速なエンジンとなってしまうというのが現状)。そこで、今後の付き合いも考え、Arcturs社を採用したのだ。
 では、なぜHecthorチームがここまで高速性を重視するのか。それは、Hecthorというチームの前身に大きな影響がある。チームオーナー、フリッツ・ヘクトール。彼はパイロット現役時代、 長年C&Mのエースパイロットとしてその名を馳せていた。そんな彼が独立し、チームを設立したのは2021年。彼は今でも、どのようなレースであれ、高速性こそが勝者へのパスポートであると信じて止まないのだ。 現役退職後設立したこのHecthorにも、確実にその思想が生きている。
 さて、この240エンジンだが、オーソドックスな初期型電気推進式エンジンである。宇宙開発用に創られている為、それを地上用に若干改変してはいるが、大きくは変わっていない。C&M の使っているShootingStarとの相違点は、その燃焼温度の違いである。数々の研究を重ねて創られたShootingStarに比べ、同じプラズマの理論を使っていても、240のそれとは燃焼温度が全然違うのだ。
外壁素材:一体成形型金属KeES

 最高速を追求するHecthorにおいて、エンジンのみではなく外壁素材についても最重点項目の 一つとなる。実にHecthorチームでは、この素材研究のために、通常のチームが外壁にかける 予算の実に3倍の費用をかけている。
 さて、一体成形型金属とは、その名の通り、機体の全てを一つの素材、即ち、ビス、溶接など、止めが一つもない完全な一枚板での加工、という意味 である。この素材方式による利点は、明らかに局所耐久力のアップが望めること、そして全体が一枚板になることにより、接合部の段差などによる空力欠損が無くなる、という事がある。 また、このKeESという新素材に関しても非常に摩擦係数が少ない金属であり、それにより大気による機体への抵抗力も相当小さくなっている。
 このように、摩擦を少しでも減らす為の新素材の開発、その成型方式の開発、そして機体のフ ォルム自体の空気抵抗を最小限に考えた構造など、最高速にかける情熱は著しい。 しかし、この機構にも重大な欠陥がある。
 それは直進方向性の摩擦を極限まで落とした事による旋回時の不安定さ、そして機体形状をあまりに最適化したために発生した、上下左右の不安定さである。特に後者は相当深刻で、通常Fomula highpowerd機でバランス補正の役割を担っている翼を極限まで小さくしているため、機体が容易に回転してしまうのである。
 これらの技術的な欠点は、様々な要因が絡んでいるが、このチーム自体がまだ経験が浅いという点が有ることも否めない。しかし、無限の可能性を秘めたチームであることは確かなのであ る。

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