2-2.WEIMAR

 強力無比な旋回性能を特徴とする機体、WalkureとSkuldを保有する財閥団体チーム。
 その特徴に全てを注いだ経緯と、その手法とは?

エンジン:A-max AM-D312i/DELTA

 A-max社製のエンジンD312i。
 Foxtrotと違い、DELTAはA-max研究開発部独自のアーキテクチャを持つエンジンである。Weimarチーム自体は開発には直接関与はしていない。だが、チームコンセプトとして幾つかの重要な要求は提出している。位置的には汎用性を高めたエンジンAM-D312のWeimarカスタマイズi/DELTAといった所だろう。
 特徴としては、ラム・ターボハイブリッド方式による無段階切替エンジンを採用している事が挙げられる。ある一定のスピードが出ると、低速ターボジェットから高速ラムジェットへと徐々に切り替えられるエンジンだ。これによりターボエンジンの長所である加速性、ラムエンジンの長所である高速性を兼ね備えたエンジンを実現させた。

 物理機構としては、ラム・ターボの両方の目的として使える完全互換エンジンを目指している。 ターボ時のアフターバーナーはラム時の燃焼室として使えるよう、可動式スロートを用い、また液化水素の流れもターボ・ラム両構造に連続的に分配できるシステムとなっている。
 実際には完全にどちらかに寄るのは、スタート時位のもので、通常時はターボ・ラムの両方の推進方式が一つのエンジンの中で混在して行われているという特殊なものだ。 それ故、ラムジェット本来の、純粋な力を使い切れない(=MAXスピードが遅い)という欠陥がある事もまた明らかにしておかねばならないだろう。
 i/DELTAカスタマイズは、主にダウンサイジング、スロート稼動速度の向上と、エンジン(主にターボ部)にAUXデバイスを搭載している事である。エンジンの創り出すエネルギーを他のデバイスに送り込み、少ないエンジンプロセスで多くの事をしようとする目論みである。

旋回機構:Cutie burnier 377s

 他のマシンには殆ど存在しない特殊な機構としては、片側3系統の側方バーニアだろう。WeimarのWeimarたる所以はここであり、また同チームが最もこだわりを持った部分もここである。
 Quick turnの頭文字Q.T.をもじって「Cutie」とは何ともWeimarらしいネーミングだが、この機構自体は非常に勇気有る設備であると感じずにはいられない。
 3系統中2系統は、パイロット自らの操作できるコントロールドバーニアである。エンジンDELTA-AUXから配分されたエネルギーを用い、小さなロケットエンジンを噴射させる、ごく普通の側方バーニアだ。ところが残りの1系統は、ある一定以上のの旋回を必要としたときに自動的に噴射される自動増補型バーニアなのである。

 バーニアによる厳密な急旋回は、パイロットにとって非常に難しいテクの一つだ。ましてや3系統ものバーニアの制御は事実上不可能である。
 しかしWeimarチームのパイロット、クリスティ・ライトは2つのバーニアによる旋回角では物足りなさを感じた。彼女は高速コースから複雑・低速コースへと変遷していくFomula highpowerdレースの状況を鋭く先読みしていたのだ。どんなカーブであっても、ノンブレーキングで曲がれる機体こそが、今後のFomula highpowerdを征するであろうと確信して止まなかった。
 結果、バーニアは3系統用意された。しかし3系統の制御は困難、2系統にまとめた場合バーニア点火時のパワーが強すぎてやはり制御不能。ならばOSによりバーニアをコントロールし、2系統の最大出力を越えた場合3系統目を自動調整し噴射するシステムを作れば良いのではないか?そういった発想から生まれたシステムなのである。
 実際、この機構でクリスティ・ライトは峠の女王と呼ばれるまでになった。しかしその後彼女の引退により後継者となったマリエン・シャルロッテはこの機構に苦戦し、感を掴むために過酷な努力を必要とする事になったという。

フェア・ウェル デザインズ

 Weimar財団の保有する研究所の一つ、工業意匠系デザイン研究所「フェア・ウェルデザインズ」の、長年の伝統有る実績に基づいたフォルムによりWeimar機は表現されている。
 それは今までのFomula highpowerd機のフォルムとは全く違う、新たなデザイン体系を確立しようとしている一つの結論でもあるのだ。 曲線を多く用いたフォルムは見た目にも有機的であり、他のマシンの画一的な線形デザインとは一線を画している。 しかし、通常流体力学による理想機体形状を算出した場合、このような形態になり揺ることはあり得ない。明らかに現代流体力学を無視したフォルムである。
 フェア・ウェルデザインズはこの形状のことを「Ray streamliner(エイ流線型)」と呼んでおり、一つのデザイン形態を確立する事を裏付けている。

 Weimarがこの形状を敢えて採用した裏側には、性能効率のみを重視する現代のFomula highpowerd機の機体形状に対する、閑かで力強いアンチテーゼが有るように思えてならない。そして、ここにまたWeimarチーム独特の「こだわり」をかいま見ることが出来る。
 「見せる」プレイに徹するWeimarならではのスピリッツが、ここに見事なまでに表現されているとは思わないだろうか。


<<メカニカル・ガイドトップへ
<<フレヴェファントップへ
<<トップへ

<<PrevNext>>